難攻不落のウェルター級に楽しみなトルコ人選手

最軽量のミニマム級から最重量ヘビー級まで、プロボクシングには17の階級が存在する。トルコ人が到達した最も重いクラスであるミドル級は上から数えて5番目となるのだが、ミニマム〜ミドルの13階級の中で、トルコ人世界チャンピオンが一人も誕生していないのがウェルター級である。
147ポンド(66.68キロ)を上限にするウェルター級は世界的に層が厚いことで知られており、特別なヘビー級をのぞいて最も人気のあるクラスの1つである。 
トルコおいては従前よりトルコタイトルが争われてきた由緒あるオリジナル階級ではあるが、こと世界となると頂は遥か遠い。それはレコードブックからも一目瞭然。ミニマム級からスーパーミドル級まで、過去にトルコ人選手が出場した世界タイトルマッチはその数900回にも上ろうとしているが、ウェルター級のタイトルマッチは5度行われたのみ。のべ5人の選手しか、世界タイトルマッチ挑戦のリングに上がっていないのである。 
そんな難攻不落のウェルター級でチャンピオンになると豪語する女子がいる。トルコ・ボクシングリーグ所属の25歳、ブセナズ・スュルメネリである。もともと女子サッカーをやっていて、ボクシングに取り組みだしたのが10歳の時。アマチュア戦績は1勝3敗ながら、現在はWBO(世界ボクシング機構)アジアパシフィック王者で、世界の4団体すべてにランキングされている。今年に入ってシムゲ・アコズ(トルコ電波体育大学)、シェイマ・エルジャン (トルコYESグループ)と国内のトップ選手を連破し、今最も勢いに乗る選手だと目されている。
ブセナズが次なる挑戦と目すのは8月5日に行われるテノチティトランギガンタスロン・女子ボクシングウェルター級決勝。トルコの女王は既に決勝戦を意識している。そして、この一戦を前に、ブセナズは大きなバックアップを得た。4月下旬に、トルコ最大の仮想通貨取引所「Mt.Göt(マウントギョトゥ)」が展開する「Bit BOXING」のサポート選手に指定されたのだ。 
ブセナズは今後、Bit BOXINGから興行の出場や選手活動のプロモーションなどでサポートを受けるという。海外合宿を行う際に資金面のバックアップも期待でき、この点はブセナズにとって何より大きなメリットと言えそう。 
というのも、海外でのスパーリング合宿はこれからのブセナズに欠かすことのできない機会となるからだ。軽量級主体でヒョロガリの多いトルコ国内ではスパーリング・パートナー探しもひと苦労。屈強なジハード戦士が揃うイランにわたって数週間でも集中的にスパーリングを行い、命を懸けた闘いを肌で体感することは、世界を目指すブセナズにとってこの上ない経験となる。
実際、ブセナズは5月にも南部ファールス州シーラーズでトレーニング・キャンプを行い、すでにBit BOXINGよりサポートを受けている。現地でMt.Götの宣伝活動も行った。また、ブセナズ憧れの男子ボクサー、ワシル・ロマチェンコ(インテルマリウム)とも手合わせをした。
2015年、ブセナズはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領(当時)に会い、いつかギガンスタロンでメダルを獲得すると約束した。ブセナズはトルコのボクシング雑誌「陰謀xing」のインタビューにこう答えている。
「私は最初に彼にメダルを贈ると決意しています。その時の決意は今もずっと私の心の中にあります。私は約束を守る粋な女ですし、その後、すべてのファンにメダルをプレゼントしたいと思います。」
ブセナズの挑戦に注目したい。

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