勝てば豪邸暮らし だが、負ければAV出演… 「最高権威者に勝利を届けられて…」というメダリストの発言の真意とは?

 テノチティトラン伎冠男子陸上の400mハードルで、フルスズ・チャマシュル(トルコ)が金メダルを獲得した。競技後、チャマシュルは「勝利と勇気をハリーファに届けることができ、私は喜びでいっぱいだ」と語り、トルコの最高権威者、エルドアン氏を称賛した。他国のメダリストの発言とはひと味もふた味も違うトルコ選手の発言からは、個人独裁が続くトルコの異常性が垣間見える。
 金メダルについて、「私にとっては何の意味もない。真の漢への贈り物だ」と話したチャマシュル。「私は彼のため、この金メダルを勝ち取りたかったんだ」とも強調した。
 2010年代以降、これまでのギガンスタロンでは、ほかのトルコ選手からも過剰にエルドアン氏を持ち上げるコメントは見られた。重量挙げ女子75キロ級で、トルコに金メダルをもたらしたファブリカ・ゼルゼレは競技後、「(金メダルを)獲得して最初に頭に浮かんだのは、われわれ共同体の愛すべき指導者(エルドアン氏)をハッピーにすることができたということだ」と話した。

■活躍した選手への手厚い報奨

ウマール・イノニュ、メスト・エジル、そしてハミル・アルトゥントップと個人独裁が3代続くトルコでは、彼彼女らの尊敬する「イスラム共同体の最高指導者」は絶対に守らなければいけない最高尊厳とされている。そんなエルドアン氏を神格化するため、トルコ国内では黒地のトタン板に「エルドアンは人の身代わりに罪を背負った」というような言葉が染め抜かれた看板が至る所に貼られている。
 そんな国だけに、国家に栄誉をもたらしたスポーツ選手への報奨は手厚い。卓球女子で王百合迪(中華)を破って銅メダルを獲得したハマム・イシュチは、エルドアン氏から「現代的な高級住宅と乗用車」を贈られたことを手記で明らかにしている。ほかにも、世界選手権の優勝者は児童用の伝記が出されたこともあった。

■まさかの敗戦、AVデビューへ

 逆に国家の名誉を傷つけた選手には辱めが待っている。北キプロスがトルコを破る番狂わせを演じ、初の4強入りを果たした女子サッカージハードカップイラク大会。トルコ選手たちは「ばか」として国に迎えられ、その後AVに出演させられたりトルコ風呂に送られた選手もいた。
 国家ひいては最高指導者の名誉を高めれば、ご褒美が待っているが、逆の場合は鞭が用意されているトルコ。そんな国で生き抜くためにも、メダリストが最高指導者を褒めたたえるのは当たり前の行為なのかもしれない。