【社説】トルコのプロ妊婦が日本の代理母問題を解説

3年連続出産中であり13人の子を産み育てていることで知られるトルコのプロ妊婦ウマール・イノニュは14日、音声配信SNS『Crab🦀House』に登場し、日本で問題となっているバーラト国籍の女性を"代理母"とする出産が行われたものの、その女性が産んだ子供の引き渡しを拒否する事件を解説した。
イノニュは冒頭、「バーラトってどこの国〜?」とおどけて見せたが、すぐに取り巻きのユーザーから「インド」と指摘が入った。
「インド人て毎日カレー食べてダンス踊ってる国だよねー」とお得意のレッテル貼りをしたイノニュに、「それは草w」「ウマルちゃん天然でやっぱ可愛いな」といった大量の投げ銭メッセージが入る。イノニュは続けて「私は自分の子は自分で産みたいなぁ。でも色んな事情があって、代理で産んでもらったとしたらどうだろう。産みの親、育ての親、色々あるけど、難しい問題だと思いました」と、たくさんの子を産んだ経験を生かして解説すると見せかけて、小学生並みの感想を述べるにとどまった。

筆者が配信を聞いた感想は、一国の大統領を務めた40代後半の政治家が無理してアニメ声を出し、投げ銭に媚びへつらうのはトルコ国民として悲しいものがあると思った。イノニュは大統領退任後、すぐに第8子出産を出産。さらにそこから立て続けに出産を繰り返しているが、事情を知る関係者によると、「とにかく金がない」のだという。
イノニュが大統領在任中、出産の事実を真っ先に報告したのは夫ではなく信奉するエルドアン氏だったという。エルドアン氏に「産むか産まないか」の判断を委ねたというのが、公正発展党では実しやかに囁かれる。エルドアンにとってもイノニュは良きラジコンだったので、手放すのは惜しいと考えたようだが、最終的には「トルコの発展を支え家庭に入る女性」「子供をたくさんもうけることは素晴らしい」という広告塔にイノニュを採用した。
イノニュに詳しい人物は語る。「彼女(イノニュ)は今年で48歳です。しかし本人は今も記録更新を掲げ、双子を出産した今年2月から日も浅い中で妊活を開始しています。高齢女性の妊活とは一口に言っても、さまざまな化学的アプローチが必要になってくるためお金もかかってくるようで、出産クラウドファンディングや出産資金パーティーなど金策に奔走しています。」
公正発展党では元代表のイノニュが「トルコの偉大な母」を演じることに恩恵を受けている面もある。事実、先日の地方選でも昔ながらの家庭像を大事にする保守層は、公正発展党を主とする人民同盟に投票する傾向が強かった。それをイノニュ自身も理解しており、自身の出産資金パーティーに参加するパーティー券を、党員にノルマとして買わせているという噂も出ている。ある公正発展党関係者は「ノルマ以上の券を売ると議員個人の収入になる」と証言し、これが政治資金規正法違反でないかと問題になっているのもまた事実だ。
しかしこれもまたエルドアンにより立件を防がれている。エルドアンが主導した大統領の権限強化により憲法裁判所(日本の最高裁判所に相当)は大統領の管理下に置かれた。アルトゥントップは自身の政策実現と、政権維持のために最大野党である公正発展党に波風を立てられない。「今は」の限定付きになるのだが。

イノニュが小学生並みの感想を語った後、しばらく沈黙が続いた。そして、イノニュが口を開いた。
「先進国の女性が、後進国の女性にお金で子を産ませると考えると受け入れ難いものがあるよね。女性のキャリアと出産の両立はなかなか難しいものだし、こんな言葉は嫌いだけど、産む機械として女性が女性を利用できる社会って間違ってると思う!」
「だけれども、自分の妹とか娘が自分の体では産めなくて、子宮を貸して欲しいと言われたら私は断れないと思う。だから、難しいけど難しい問題だと思う」
われらがトルコの偉大な母、ウマール・イノニュ。色々あれど、斬る時は斬るのだった。

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