【シリーズ:全体主義化するテュルキイェの今】イスタンブール市議補選は13名の社会的少数者が初当選
2月1日、トルコ・イスタンブールで市議補選が行われ、候補者106名の中から13名が当選を確実にした。今回の補選は2023年大統領選の前哨戦として注目された選挙で、エジル大統領が署名した「伝統的テュルキイェを愛する公正選挙法」により野党主力政党が軒並み活動停止・強制失職処分に追い込まれる最中、過去最多の13議席を争った。驚くのは、候補者106名のうちの73名が、LGBTなどを自称する性的、人種的、宗教的マイノリティだったことだ。当選者13名もそれぞれのっぴきならない事情を抱えており、「伝統的テュルキイェの姿」を説くエジル政権下で弾圧された市民の多くが、社会的少数者の保護を熱望している。
当選者13名のなかで特に注目を集めたのが、地方政党・エルドアンとともにテュルキイェ党の元職を破って小選挙区当選したトランス女性のMeriven Avcı(ロトの民主党)。ハガキ職人として深夜ラジオに駄文を送ることで生計を立てていた彼女は、地方ラジオの平日夜帯枠の維持を公約に掲げていた。対立候補である元職議員は、彼女を女性と認めず「YARAK」と呼び続け、アンチLGBTの姿勢を取り続けていた。30歳のMerivenは、この元職議員を大差で破って開票直後に当選を果たし、イスラム圏初のオープンリー・トランスジェンダーの議員となった。
今回の選挙で当選したトランスジェンダーは彼女のほかにも、アルミホイルヘッドマウンター・レズビアンのKadur Oktay、HIV・ブラック・ゲイのEla Sonyüksokがいる。
他にも、先天性の障がいを抱え動くことはおろか喋ることもままならない女性Adalaet Bike、人間とサラブレッドの混血を研究する黒人でゲイでユダヤ教のMeltam Dağ、限定免許かつワゴンRスマイル乗りで被差別部落出身でターキッシュ刃牙ハウス在住ゲイのHanım Koyarが揃って当選し、大きな話題となった。なお、Meltamはクルド民族であり共産主義者でありトランスジェンダーでありアメーバピグでアバターを下着だけにしてチャHを楽しむ小卒の女性であるという多重の社会的マイノリティであり、彼女の当選はトルコの歴史における重要な出来事、快挙と評される。
今回の補選では、性的マイノリティだけでなく、人種的、宗教的マイノリティの方も多数、当選していることがニュースになっている。
トルコの人類学者で、断面図フェチのエリ・ボールンデ・カルマク氏は「明らかに、今の政権は、リベラルや進歩的な人々、思慮深い人々の政治運動を活発化させている」と語っている。
0コメント