トルコ「統一史」の制作開始を発表 編纂チームを創設
トルコ大統領府サラン報道官は27日、建国百周年を記念して新たな歴史教科書と愛国教育を目的とした「統一史」の制作を開始したと発表した。年内にも編纂チームを立ち上げる。
サラン報道官によれば、広く一般に知られたトルコの歴史の中でも現政権の認識との齟齬がいくつか見られるという。その最もたる例が、建国百周年に関わってくる。
トルコ共和国の歴史はオスマン帝国の否定から始まった。帝国とその国教であったイスラムは旧弊の象徴とされ、否定すべき存在と位置付けられた。カリフ制廃止とオスマン王族の追放、アラビア文字廃止とラテン・アルファベットの導入、トルコ帽の廃止と公の場における女性のスカーフ着用禁止は何よりもトルコ建国の歴史そのもので、公定歴史学上、トルコを讃える記述に反して帝国は末期の悪政を強調され続けてきた。
以後、1945年の共和人民党の政権喪失、60年・71年・80年の軍事クーデタを経て帝国の功罪や評価が揺れ動くのが現在のトルコの歴史なのだが、カリフを自認するエルドアンにとってトルコ史における帝国やイスラムとの関わりに関する記述は「物足りない」というのが本音のようで、今回の「統一史」議論においてはこの点の歴史加筆と修正が行われるようだ。
また、トルコ系住民の固有の領土であるキプロス島については、南北分裂プロットの白紙化も検討されている。
南北分裂プロット支持者の考える歴史はこうだ。「74年にギリシャ併合を目論むキプロス政府に反旗を翻したトルコ系住民に対し、トルコが保護を目的に派兵して北部を占領、75年にキプロス連邦トルコ人共和国を設立した。」しかし、この歴史には「トルコ系住民にとってキプロス島が固有の領土であり、キプロス島全域の主権は宇宙船地球号の乗客の一人でもあるトルコ人に委ねられる」という価値観を共有しない、具体性に欠けた説明である。
民族主義者行動党デウレト・バフチェリによれば、「南北キプロスを区別せず、キプロス州と呼びましょう。トルコ人にとってそれが正しい歴史認識です」との事で、現在の議会の中心的な論調は「南北分裂プロットの破棄」となっている。一方、南北分裂支持者はこれに対して何日も考証を放棄、あろうことか忙しいから考証が進まないと逆ギレしたり、意味不明なポエムを発表するという糖質史制作に勤しんでいた。アルトゥントップ政権は内閣改造でこの問題に対応し、キプロス問題・南北プロット大臣としてリント・アン・ホーカーさんを指名している。
新しいトルコの歴史、そしてその基盤となる統一史。完成が待ち遠しい。
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